自作ボート・Spindrift 10n 製作記

スイスの湖に自作ボートを浮かべるまでの記録

完全自作、または設計図を買う、または製作キット

本来の目的は、綺麗なボートを安く購入すること。特に自作にこだわる気持ちもなく、合理的な入手ができればそれで良い。けれども、完成艇を安く購入するのは難しいです。まず、分割できるディンギーの供給自体が少ない。あったとしても非常に高価です。無いなら作れば良いのですが、ここで選択肢が3つ出てきます。

 

1. 完全自作(設計から建造まで自力で行う)

2. 製作キットを買う

3. 設計図を購入し、木材の入手やカットは自分で行う

 

どうせ作るなら気持ちは完全自作。ですが私は流体力学の造詣が全くありません。勘に頼って流線型の青写真を引くのは可能ですが、素人が良い結果を出せるとは思えません。また素人設計は直線的になりやすく、いかにも素人工作な見た目になるのがちょっと…。自信もないので、完全自作は却下しました。

 

製作キットは当初の本命。いくつかの会社で、あらかじめカットされたマリン合板、エポキシ、ガラスクロスなどをまとめた自作キットが市販されています。おそらく最大手はアメリカの CLC boats で、大小様々なボート、ディンギーをキットにしています。

www.clcboats.com

 

デザインで特に惹かれたのは、最近追加されたライトハウス・ピーポッド。クラシカルなダブルエンダー、クリンカー風の外見で、とにかく見た目がいい。性能は知りませんが、見た目で一目惚れです。問題は 4 m のサイズ、80 kg 前後の重量。分割も改造しないと不可。

 

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より現実的なのは、こちらのイーストポート・プラム。特にネステッドバージョンは半分程度のサイズに収まります。コロンとした形が可愛く、見た目は完全に好み。問題は少し小さいことで、2.4 m だと3人乗りは少し難しそう。川での安定性も不安です。また浮力体がネステッドには無く(通常版は前後に空気室あり)そのあたりの改造も必要です。やっぱり小さすぎるのが不満。登録長 2.5 m 以下はスイス国内で船舶登録が不要で、その点は良いのですが。

 

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(from: https://www.clcboats.com/shop/boats/wooden-sailboat-kits/eastport-pram/eastport-pram-rowing-sailing-kit.html)

 

ちなみにCLCは英国のhttps://www.fyneboatkits.co.uk、ドイツのhttps://www.bergerboote.deが代理店になっています。特に Fyneboatkits は写真が豊富、また米国サイトにはないオプション等もあり魅力的です。私はFyneboatkits でマリン合板とハッチ、オールロックなどを、bergerboote で自作ボート用エポキシなどを購入しました。

 

米国の Bedard yacht design が出しているディンギー、Ozona X はサイズも3 m でちょうど良く、形も悪くない。ただ問題は、発売後間もないキットのため、どこを探しても製作記録が見つかりません。youtube で動画がありましたが、見つかったのは彼らの動画とインスタグラムの投稿のみ。ちょっと危険かと判断して、これはやめにしました。

 

www.bedardyachtdesign.com

 

 

ほかには、Small Craft Adviser の S.C.A.M.P. もかっこいい。キャビンは憧れです。けどこれを2分割にして日本に持って帰るのはどう考えても無理。

 

www.instagram.com

 

 

と言う訳でキットは全滅。必然的に選択肢3の設計図購入に至りました。

設計図から起こすとなると、残念ながらクリンカー風デザインは却下。カットが増えるため、精度が気になりますし、カットの手間も増えてしまいます。特にCLCのデザインは、縁をルーターで加工して Lapstitch をしなければなりません(これ自体は素晴らしいアイデアだと思います)。仕事の合間に作るので余分な時間はかけられない。あまりうるさいのも近所迷惑になります。自分で切るなら、V型か平底のシンプルな設計がいい。

 

色々悩んで決めたのは、アメリカ B and B yachts のディンギーSPINDRIFT DINGHY。ネステッドデザインもあり、現代的なV型ハルのためパネルのカットも容易でしょう。ボートの紹介文には、小型テンダーのレースで常勝だったとあり、設計は古いにせよ中身は確かかと思います。9-12 feet までありますが、今回は 10 ft (3 m) モデルを選択。原寸大設計図も購入しました。実はこのボートのキットもあり、本当はキットが欲しかったのですが、米国国外には輸出しないそうで、残念。下に引用した動画は少し小さい 9 ft バーションです。

 

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