自作ボート・Spindrift 10n 製作記

スイスの湖に自作ボートを浮かべるまでの記録

自作に使うマリン合板、木材などの入手

 

マリン合板

購入した設計図にも、「使用する合板にはマリン合板を絶対に勧めます。あなたはこれからかなりの時間を制作に費やすことになる。同じ労力を注ぎ込むなら、孫子の代まで使え、また売却価値のある作品を作った方が良くはないか」とありました。

 

マリン合板とは、船舶の構造材用として供給される合板のことです。主な特徴として、耐水性(フェノール樹脂接着剤)、ヌケの無い芯材を使用した高い品質があります。しかしそのほかにも、接着剤に防腐剤を混合して耐久性を高め、また各層が均等な厚みなので曲げ耐性にも優れるとのことです。高い材料には理由があるのですね。

 

さて、日本ではマリン合板の入手が困難なようですが、それはスイスも同様です。スイス国内の通販では、8 feet の合板一枚が 250 フラン(25,000円程度)しかも規格は無名のイタリア海洋協会規格。これなら海外から輸入した方が安いので、今回はイギリスのFyneboats から個人輸入しました。 6 mm 厚で一枚5,000円程度、合計4枚購入。これに送料が合計2万円ほど。送料は合板以外にも金物なども含まれます。高いですが、そもそもこのボートは次の居住国にも持って行く気でいます。国際貨物の混合便で送料が10万超なことを考えれば、下手な材料で低級な舟を作っても割が合わないでしょう。そもそも材料を出し惜しみすると、将来気になり始めるのが目に見えています。

 

購入した合板は、BS 1088(British Standard 1088)というマリン合板の規格をクリアしています。BS 1088 はマリン合板の国際規格とも言え、高品位の接着剤による耐水性、耐熱性、耐腐食性(カビなど)、両面・芯材ともに無節で美しくヌケの無い材、さらに各層が均等に積層されていることなどが求められます。各層が均一でないと、縦横方向で強度が異なり、またスカーフジョイントによる接着強度にも影響が出るそうです。今回は 6 mm 厚の 8 feet を4枚購入しましたが、重くて大変でした。半一階に住んでいるので階段は半階分しかないのに、重くて持ち上がらず、結局玄関先で開梱して一枚ずつ自室まで運び入れました。重さだけならともかく、240 cm の大きさが問題でした。

 

各種木材

合板以外に問題なのが、ガンネルや各種補強材に使う材木です。なにしろ販売店はドイツ語なので、樹種を知るにも一苦労。Buche がビーチ(ブナ)、Fichte はスプルースなど。しかも、Fichte/Tanne (Herkunft: Schweiz) とあれば、スプルースでも北米産スプルースではなく、スイス国内産のスプルース、つまりドイツトウヒ、ヨーロピアホワイトウッド、ヨーロッパスプルースの類と思われます。Wikipedia によるとこれらは耐朽性が低く、どうもボートには向かなそうです。ビーチも船舶用途には不適。SPFホワイトウッドなら売っていますが、これらも水回りには不向きでしょう。

 

広いDIYの店を歩き回った結果、チロル杉という樹種の荒材を発見。アルプスのチロル地方で育った杉で、寒冷地なため木目が詰み、水にも強いとの表書きです。ほかに選択の余地も無く、これをトランサムの補強材にすることにしました。

 

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(追記)

更に一月後、このホームセンターを当てもなく2時間ほど歩き回っていると、建材コーナーにダグラスファーを発見しました。(なぜか丁寧に学名 Pseudotsuga が併記してあったのではっきり識別できた)先ほどの荒材は置いておいたら激しくねじれが生じ、使い物にならなくなってしまいました。その直後にスイスは2回目のロックダウンに突入。コロナウイルスを恨みつつ、木材を買えないがために作業できない日々を過ごしました。今回ダグラスファーの芯材(赤身)から切られた板が買えたので、こちらをトランサムの補強材にすることに。